本年度は、農村と都市の両地域における史料の調査・収集をさらに進め、研究を進展させた。農村については山梨県南都留郡西桂村の兵事関係史料や戦時農山村の統制に関する史料を調査・収集した。また都市部については、神奈川県川崎市で労働関係史料を調査・収集した。とくに、川崎市労働資料室の資料は戦時から戦後にかけての川崎市の変化を知る上で良好なものが多い。また今年度は、昨年度調査をして、所在を確認した東京大学社会科学研究所所蔵の京浜工業地帯調査史料を撮影し、分析を進めた。この京浜工業地帯調査史料は、1950年の時点で川崎市代行上で働く50名について行った聞き取り調査であり、出身地・生家・続柄・教育歴・職歴移動などが詳細に分かるものである。つまり、1950年に時点で川崎市の大工場で働く50名が、どのような 経路をへて川崎市に流入してきたのかがよくわかるものであり、戦時から戦後の変化を知る上で格好の史料と言える。今のところ、戦時から戦後にかけての地域社会の変化は巨大なものがあったが、それは戦時動員と戦後改革の二重の衝撃によってあらわれたものであり、どちらかのみに重点をおくことはできないこと、二重の衝撃の歴史的意味については過不足なく評価することが肝要であり、昨年度と今年度収集した資料を通じてその分析を進めているところである。なお、山梨県で収集した史料の一部は、『山梨県史 資料編17』に収録した。
|