1. 研究目的に掲げた(a)〜(d)4つの課題について、(a)移出産地の産米改良事業については、本年度実施計画に基づき、主に秋田・宮城・山口・熊本の各県を対象として、(b)の輸送条件の変化(汽船・鉄道・道路など)と合わせて関係資料を調査・収集した。現在収集資料を分析中であるが、以下の論点について検討している。 (1) 産地において、品質の斉一化、容量の統一、調整の改良、俵装の改善などからはじまった産米改良が、産米の品質そのものの改良(農事改良)をも包摂していく過程。 (2) 上記の過程が、地方の米穀商・地主・生産者を組織化しながら展開する実態。 (3) 産米改良の進展を前提として、輸送条件の革新が、移出産地の供給と大都市の需要を結びつけたこと。 2.(c)消費市場の構造については、東京・大阪の二大消費市場の正米・定期取引に関する資料を、国立国会図書館などが所蔵する刊行物を中心として調査・収集した。いずれも一次資料は少ないが、次年度以降も新たな資料の所在を確認していきたい。ここでの問題関心は、以下の点にある。 (1) 遠隔地にも拡がっていく移出産地の産米を、大都市市場が比較的安定的に吸収できた条件は何か。 (2) 大都市内部の取引機構を、正米市場だけでなく定期市場を含めて検討すること。 3. (d)米穀流通の変貌の数量的解明については、国内主要港湾の移出入、鉄道輸送輸送など関する刊行資料の収集につとめた。また1の作業を通じて、各産地の移出先およびそのルートの変貌などに関する資料も収集した。 4. 以上の作業はなお進行中であり、1については北陸など新たな対象地域を含めて、2については大阪堂島米穀取引所、および北海道など地方の消費市場を対象として、次年度以降も資料を調査・収集する計画である。
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