研究概要 |
平成10年は,日本の証券流通市場でかなり大きな制度変更が行われた。取引所集中義務の撤廃により,立会外(前場と後場の間など取引所立会時間外)の取引や取引所外での取引が認められ,さかんに利用されるようになった。また東京証券取引所の情報開示が進み,秋には気配値が公表されはじめた。気配値の公表により,いまこの瞬間に売買を行おうとするといくらの値段でどれくらいの株数の売買が成立するかが,市場参加者にわかるようになった。今年度はこうした制度変更およびこれら新規に公表されたデータの利用可能性を調査した結果,来年度はこうしたデータが利用可能となる見込みである。 こうした情報の利用可能性が投資家行動ひいては鉦券価格にどのような影響を及ぼすのか,まず投資家からの注文を受けこれを市場につないでいる証券会社に対し,聞取り調査を開始した。制度変更から間もないので,今後も続けて調査を行う予定である。 転換社債を含め証券発行についてどのような観点から検討を行い,証券会社や銀行からどのような提案を受けたかについて調査するため,東京証券取引所や証券会社に対して予備的な聞取り調査を行った。これらは発行企業へのアンケートにより調査する計画であったが,これら調査内容は,資金調達を考える時点の日本の景気,および金融市場の動向にかなり左右されるという意見を得た。これを踏まえ,いつの時点について調査するのか,仮にこれが過去を対象としていれば現在の担当者には答えられないかもしれないといったアンケート調査に関わる技術的な点に関して,検討中である。
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