企業倒産の処理法の中心的役割を期待されている会社更生法の機能を実証的に検証することが本研究の目的である。とりわけ、会社更生法による更生計画が経済合理的な内容となっているか否かを、オプション評価理論を応用し、資本市場での評価の観点から検証することが特色である。 当初の予定では、1970年〜1997年の28年間の会社更生法に基づく更生計画を分析することとしていたが、より完全な分析を行うため、対象期間を拡大し、会社更生法が施行された1952年から1997年までの46年間とした。また、更生会社の業種を標準産業分類の産業小分類のレベルまで分類して分析することとした。作業量は、当初計画の数倍になったが、データベースとしての価値も増大した。平成10年度は、官報掲載の会社更生公告の収集作業を行い、更生計画の開始・認可内容・終結(変更・廃止)に関するデータを集め、デバッグの作業を残し、一次データベースの作成を完了した。データの記述統計的観察だけからも、(1)旧資本金が100%減資されるようになった、(2)大企業への会社更生法適用の傾向が強まったことなどを統計的に裏づけることができた。経済理論、ファイナンス理論に基づく仮説の統計的検証の作業は平成11年度に行うこととなる。また、統計データを補完するために、更生企業に関する定性的データの収集を行う。更生事件は地方裁判所の管轄下で処理されるため、更生企業所在地での出張調査も必要となる。関係人集会への出席を承認されている事件(静岡地裁での事件等)に関連する調査を中心とするが、事件数の多い大阪での調査も行う予定である。
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