本研究では『貨幣・金融制度と経済発展』の問題を理論的かつ歴史的に分析することである。前年度から継続してきた研究成果を「アメリカの貨幣制度」と「制度と経済活動」として発表した。前者では歴史的分析であり、後者は理論的分析である。 本年度行った研究は、「中小企業と金融」の問題である。中小企業は政策的な観点から重要な問題であり、かつ最近では中小企業政策の方針が見直されている。しかし伝統的な主流派経済学においては「中小企業問題」というものは分析されず、また一般的に問題とされる「中小企業」に対応する概念も存在しないようである。本研究では、企業経営における規模の経済に注目しつつ、中小企業の特徴である「自己資本の小さいこと」と「金融市場での情報の非対称性」が中小企業問題を生じさせていることを分析している。企業の規模が小さいこと自体は問題ではなく、何らかの理由によって非効率的な生産しか行われないことに中小企業問題を見出し、それが非対称情報の下での金融市場から生じていると主張するのである。さらに中小企業の中には、現在競争力がないとしても将来有望な企業に成長するものもある。それらの企業は生産活動を通じて技術水準を高め労働の熟練をもたらすため経済全体の生産性も高まることになる。こうした企業は社会的に見ても育成するのが望ましい。しかし不完全な金融市場においては、将来性のある中小企業でも資金を得ることが容易ではないのである。これは貿易理論での幼稚産業論に類似するものである。現在こうした観点から「中小企業と金融」問題について論文にまとめているところである。
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