(A)個別の地方団体は、その団体が計画している歳出に比較して、税や補助金等が不足する分を地方債を発行して補填したいと考える。そしてこの金額の起債は自由にできるようにして欲しいという希望を持っている。ここに地方債発行自由化の主張の基礎がある。(B)しかし国全体の公共投資の大きさ、そしてその中の地方団体の公共投資の大きさは、景気動向を見据えた国の経済政策によって決められる。そしてそれに従って、地方財政計画や地方債計画が作られ、国全体としての地方債の発行額や地方債の許可方針が決められる。(C)ところで地方債の発行は、将来に元利償還の負担を残すので、すでに多額の地方債を発行して公債費比率の高い地方団体や、経常収支の比率の高い地方団体、さらには一定率以上の財政赤字を出している地方団体には新たな地方債の発行は許可しないというルールを自治省は作っている。(D)今日、個別の地方団体と自治省とが地方債の発行をめぐって意見を対立させるケースはいくつか考えられる。まず第一に、(B)でみた国全体としてみた景気対策による国の指導と個々の地方団体の事情が喰い違い、意見が対立するケースがおこりうる。これは日本の地方財政の支出が国全体の財政支出の2/3を占めている現状からみて止むを得ないことと思われる。(E)もっとも地方債に関して、国と地方との間でより激しく意見が対立するのは、(C)で述べた国の地方に課す制約である。これについては地方団体の性格により見直しの可能性があるのではないかと思われる。また財政投融資制度が改定された後は、金融市場の市場メカニズムが国の制約にとって変わるかもしれないと思っている。この研究で以上の如き考えを持った。
|