過去3年間の研究成果の概要を述べると、現行地方債の許可制度は、国の経済政策の重要な政策手段となっており、これを廃止し、地方債の発行を各地方団体の自由意志にまかせても良いという結論を導出することは殆んどできないというものである。この理由としては以下のことが考えられる。 (1)地方債の本来の役割は、耐用年数の永い公共施設の建設費は建設時点の住民の税負担によって賄われるべきではなく、地方債の発行によって賄い、その耐用年数にわたって償還し、受益と負担とのバランスをとり、世代間の負担の公平を図るというところにあるのだが、住民の地域間移動が自由に行われる現状においては、許可制度なしたこの原則が守られる保証はない。 (2)現行わが国のフィスカルポリシーは地域総合整備事業債等の地方債を財源とする地方団体の建設事業を中心にして行われており、有効かつ適切なフィスカル・ポリシーの実現のためには、国による地方債の発行量のコントロールは不可欠である。 (3)現在、過疎地域等財政力の弱い地域に対しては、過疎債等の地方債を発行させ、その元利償還金の大部分を地方交付税によって国が負担するという再分配政策が行われているが、このような再分配政策も、国による地方債の許可制度によって可能になっている。 (4)最近は地方団体の単独事業が増加し、地方分権が進んでいるが、これも国による地方債に対するコントロールがあってはじめて可能となるものである。
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