(1)本研究の狙い 本研究の狙いは、寡占企業の流通系列化政策を歴史的に再眺望することによって、流通系列化が絶えざる外部からの「挑戦」への適応として自らの活動空間、すなわち本研究での用語としてのインタフェイス・マネジメント空間を弾力的に拡大・縮小しながら「応戦」していくダイナミクスを分析することにある。このダイナミクス・モデルを明らかにすることによって、チャネル研究に対して新たな知見を与えることができた。 (2)実証的研究 本研究では、松下電気産業株式会社と株式会社ワールドのケースを取り上げた。流通系列化を通じて成長を遂げてきた両社が、この変革期への対応として、流通系列化を自ら否定することによって活路を切り開こうとしているという一般的な見方の妥当性を確認することによって、改めて寡占企業の流通系列化政策の是非を問いなおすことができた。 (3)理論的インプリケーション 両社の流通系列化のダイナミクスは、チャネルの姿が、共存共栄精神と流通支配意図が複雑に交じり合うものだったことを示していた。そのために、チャネル管理手段としての信頼とパワーは巧みに共用されており、かつパワーと信頼の間にも綿密な相互作用が働いている。両社の流通系列化には、行きすぎた「パワーの問題点」を信頼が補完し、一方で馴れ合いに墜ちた「信頼の問題性」をパワーが牽制するという、優れたインタフェイス・マネジメント・メカニズムが備わっていた。チャネル研究は、このようなパワーと信頼のダイナミックな相互関係には、ほとんど注目しなかった。
|