今年度は、日本企業の関連する国際的企業買収、合併、合弁、全額出資の効果についての実証的、理論的研究のなかで、日本から米国とラテンアメリカへの子会社の経営成果の決定要因として、企業固有の優位性、内部化の優位性や進出形態を分析している。米国へ進出している日本企業の子会社225社(ニューヨークとニュージャージー州)とラテンアメリカ13カ国への205社について、東洋経済新報社の1997年のデータにより分析している。まず、進出形態は、収益性と関係ないことがノンパラメトリック検定により導かれた。そして、2項、および多項ロジスティック回帰分析により、親会社の企業固有の優位性や内部化の優位性が子会社の収益性に対して、統計的に有意に正の効果を与えていることが指摘できた。第2に、東洋経済新報社の海外進出企業総覧のデータを1987-99年のデータを利用することにより、アセアン4カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ)への日系製造子会社827社の進出と撤退・再配置について分析している。子会社が撤退しない場合や契約の再調整をしない場合が安定であると定義し、完全所有子会社の安定性は、ネットワークのある同じ国内の複数関連親会社による子会社の場合と同じ安定性があり、そうでない場合に比較してより安定的であり、より撤退しないことが有意に指摘できた。不安定性の原因についての研究が、今後必要になると考えられる。
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