本年度は、コア・コンピタンス(技術・技能)マップの概念を明らかにし、実際に企業で導入されているコア・コンピタンスマップを検討することにより、コア・コンピタンスの蓄積と報酬システムがどのように関わっているのかについてヒヤリング調査と研究を行った。今回の調査・研究の結果、次の点が明らかとなった。 1) 調査企業では、実際、コア・コンピタンス(技術・技能)マップを作成しており、コア・コンピタンスマップは現場の作業者だけではなく、ホワイトカラー(技術部門、販売部門、総務部門、経理部門、人事部門)の作業にも導入されていた。しかも、コア・コンピタンスが企業の資源として位置づけられており、コア・コンピタンスをいかに企業内に蓄積していくかということが企業戦略の重要なファクターであることがわかった。 2) コア・コンピタンスは仕事の種類や達成度に基づいて分類されており、しかも、コア・コンピタスの達成度はランク(職位)制度と関係づけられていている点に特徴がみられる。これは、コア・コンピタンスの評価と測定を行うには、職能(部課長)制度よりも職務にそって評価することがその実体を把握するうえで、必要不可欠であることを示している。 3) コア・コンピタンスを基礎にしたランク制度は基本給に反映させてあり、業績給とは直接的な関連はみられない。なぜなら、コア・コンピタンスは長期的なインセンティブとしては極めて重要であるが、業績給はあくまでも作業の生産性(能率性あるいは効率性)を基礎にして測定されるからである。 4) 基本給と業績給の賃金・給料に占める割合をどのように決定するのか、また、生産性が向上した部分をどのように業績給に反映させるのかといった分野については実務段階でも体系的なシステムが確立していない。
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