本研究は企業のもつコア・コンピタンス(技術・技能)の評価・測定について、それを経営経済学の視点から整理することを目指している。ところで、コア・コンピタンスはアダム・スミスのいう人間のもつ、熟練・技巧および判断を意味し、その概念はハメル=プラハラードによって、コア・コンピタンスの理論として体系づけられた。彼らの定義によれば、コア・コンピタンスとは、顧客に対して他社にはまねのできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力とし、そのファクターとして「付加価値」「企業力」「顧客との接点」が取り上げられている。しかし、これらのファクターがどのような関係にあり、コア・コンピタンスをどのように評価・測定するのか、その点については戦略論の視点からは論じられているが、経営経済学の視点からは何ら論じられていない。そこで、本研究では、業績(利益あるいは付加価値)をコア・コンピタンスによってもたらされた成果とみなし、利益と付加価値がどのような共通性と相違性をもっているのかについて経営経済学の視点から整理した。その意味で本研究成果はコア・コンピタンスの評価・測定研究のための序論をなすものである。 ところで、業績(利益と付加価値)の概念が現在、混迷しているが、両者の区別と関連は次のように示すことができる。いま、c : 不変資本、v : 可変資本、m1 : 平均利潤(利子+企業家利得)、m2 : 超過利益とすれば、収益(c+v+m1十m2)-費用(c+v+m1)=利益(m2)、収益(c+v+m1+m2)-不変資本(c)=付加価値(v十m1+m2)で示すことができる。すなわち、資本家の視点から剰余価値をとらえたものが利益であり、剰余価値の生産過程から剰余価値を把握したものが、付加価値ということであり、両者の本質的な相違はないことが本研究の結論である。
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