若年人口の減少、若者の製造業離れ、グローバライゼイションによる製造現場でのグローバル・スタンダードの確保の必要等によって、日本の製造現場の職場環境も大きく変わりつつある。中高年者、女性にも対応できるようにし、その結果として、若者をもひきとめようというのである。こうした狙いをもった職場改善としては、工場の作業環境改善、自動化の推進、作業組織の再編成が主なものであるが、このいずれにも日本独自の工夫がみられる。野原はこのうち作業組織の再編に分析を集中している。その内容は以下の通りである。自動車産業の組立作業において、ベルトコンベアを維持しながらも、作業者の作業をこれ以上細分割することをやめて、作業者の作業に車の機能からみた文脈上の関連を出来るだけ確保し、作業者が、自分が何をやっているのかわかるようにする。特に作業者10〜20名程度で構成される最小作業単位においては、完全にひとつの部品機能が完結するようにする。これを「(自律型)完結工程」と呼んでいる。この新しい概念の導入の結果、作業は覚えやすくなり、何をやっているかわかるので、改善可能性や、やりがいも増大し、これと作業環境改善、「半」自動化を組みあわせることによって、中高年労働力でも対応できる職場になりつつある。またこの完結工程という概念を全社におし広げることによって、作業標準化に新たな基準がつけくわえられ、作業標準化は歴史上第2段階に入ったということが出来る。
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