研究概要 |
本年度は,旧東独を含む中・東欧経済圏を競争の新しい舞台として鎬を削る日独(欧米)自動車企業の戦略展開の新しい方向性とその違いを,「リーン生産システム」のimplementationとmodificationのパーターンの比較に求め,その相違性を究明するために,旧東独地域に設けられた自動車製造プラントを研究対象とした。その場合に旧東独自動車産業の解体再編成と民営化問題に関する研究を避けて通れないので,本年度はVW社及びオーペル社が旧東独地域に設けた「トランス・プラント」に関する研究を進めるとともに,民営化問題にも研究を広げた。すなわち,次の3分野に研究を集中した。(1) ドイツ自動車メーカー,VW社及びオーペル社(米GM社ドイツ法人)のケース,(2) 旧東独自動車産業解体後の旧東独企業の下請産業としての再編成過程の解明。とくに自動車部品産業について対象企業170社の再編成の実態の検討(継続中)。目的は,旧国営企業の民営化・清算後に,どのような経緯で会社新設・改組されてきたのか,「トランス・プラント」の生産リンケージにどのように組み込まれているのかを解明すること。この問題はドイツ統一プロセスの中で展開したので,旧東独自動車産業の民営化問題と不可分であり,したがって(3)信託公社と自動車産業の民営化問題と取り組んだ。これまでの研究の成果は,次の2論文にまとめて発表した。(1)「ドイツ統一と民営化前史-『信託公社』誕生への遡源-』奥林康司編『現代の企業システム-経営と労働-』税務経理協会,2000年1月,231-246頁所収。(2)「独自動車工業と民営化政策」藤井光男・井上昭一編『現代経営史-日本・欧米-』(叢書・現代経営学第2巻),1999年5月,234-251頁所収。
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