研究概要 |
一般に企業が市場で取引する場合に、取引費用が非常に高くつくときには取引する企業は市場で取引することをやめて,統合した組織を作り経済効率を上げようとする。本研究では最初に契約について考察し、不完備契約から生じる取引費用を基準にして市場を用いるか組織を用いるかについて検討した。しかしこのような契約を結ぶのは多数の起こり得る状態を考慮しなければならないのでコストが高くつく。不完備契約の五つの原因を挙げ、法と経済学が解を導くのに有効であるかどうかを検討した。契約に関わる資産の特定性の程度は費用と便益のトレード・オフを通じて市場を用いるか統合した組織を用いるかについての問題の解を与える。次に協働する場合の生産高の測定と報酬の配分という観点から機会主義的行動を抑制する所有権理論とコーディネーション・メカニズムについて検討し、取引費用やエージェンシー問題がどのように関わっているかを様々な角度から検証した。そして現代では情報処理システムがこの問題に対してどのような関わりを持っているかを考察した。この観点からはネットワークやサイバー・スペースとの関わりがある。組織のコーディネーション効率の観点からは取引費用とリスク・コストおよびセットアップ・コストの和が最小になるところでコーディネーション・メカニズムの複雑性の程度が決められる。情報システムを用いることから発生する情報費用も組織に適合したシステムを選択することによって節約できる。組織も情報技術に影響されて市場と階層の境界も低まり、サイバー空間が広がりを見せているので組織の形態も変容することを指摘した。
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