本研究は、1980年代までにドイツ自動車産業において展開されてきた「ドイツ的生産モデル」が市場競争のグローバル化、欧州市場・経済統合の深化と拡大(とくに単一通貨「ユーロ」の誕生)、さらには自動車の安全性や環境規制の強化といった自動車生産を取り巻く環境の一連の構造的変化の下でますます生産コストの削減を柱とする生産合理化を迫られる中で、とくに日本の乗用車メーカーの海外トランス・プラントにおける生産管理方式の影響を強く受けつつあり、これがドイツ固有の生産モデルの変容を促していることをドイツ産業社会学の実態調査に学びつつ検討することを目的としている。これは、「ドイツ生産モデル」と「日本的生産モデル」のハイブリッド化の具体的展開様式を明らかにすることでもある。 標記研究課題に関して、ドイツ乗用車産業の最新のデータと資料の入手を目的として、1998年11月下旬ドイツ連邦共和国(BRD)に短期出張を行った。その際、短期間であるとはいえドイツ産業社会学研究レビュー(とくにゲッティンゲン大学付属社会学研究所〔SOFI〕の研究者との研究交流)を行い、同時にまた「リーン生産方式」に完全に依拠して展開されているVWグループの旧東ドイツ生産拠点であるザクセン工場を見学することができた。とくに今後の研究交流という点では、SOFI所属の研究者とのコンタクトは今後のきわめて貴重な資料収集ルートを獲得し得た。 本年度は、とくに、近年のドイツ乗用車メーカーの生産のグローバル化と生産合理化の新しい動向を検討し、後者に関しては「リーン生産方式」の導入が急速な勢いで進展していること、同時にきわめて大胆にプラットフォームの共通化とモジュール生産方式の導入が展開されていることを確認することができた。こうした成果は、工業経営研究学会第13回全国大会統一論題報告および『明大商学論叢』第81巻、第1・2号等に発表してきた。
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