標記研究課題に関して、平成11年度は、前年度のドイツ自動車産業の実態調査および文献資料の整理に基づいて、ドイツ的生産モデルの「日本化」の最新動向に関する研究成果の取りまとめ作業を行った。その成果は、国際ビジネス研究学会の関東部会(早稲田大学)において「ドイツ乗用車メーカーの経営のグローバル化とドイツ的生産モデルの進化」と題する研究報告として発表した。またドイツ的生産モデルの「日本化」と関連して、その生産モデルの特性を規定する「生産システム」および「人事労務」の近年の動向について、「ドイツの労務管理-「メード・イン・ジャーマニー」の社会的基盤」【奥林・今井・風間編著『現代労務管理の国際比較』(ミネルヴァ書房、2000年3月もしくは4月初旬刊行予定)】および「ドイツ的生産モデルの特質と動向-ドイツ自動車産業の生産合理化と生産システムの進化」【坂本・貫・宗像編著『現代生産システム論』(ミネルヴァ書房、4月刊行予定)と題して研究成果を取りまとめた。そこでの新たな知見として、ドイツ乗用車メーカーが極めて積極的に国境を越えたM&Aによる規模の拡大を実現しつつ、生産拠点のグローバル化に意欲的であると同時に、生産システムの「日本化」のドイツ的展開様式として「リーン生産方式」を大規模に導入しつつある実態を解明しえた。その際、プラットフォーム・部品の共通化やモジュール生産方式の導入において日本メーカーに先行していることが明らかにされた。また日本的生産モデルの進化において何よりも求められる技術革新の課題と方向性についてもその成果を発表した。今年度は同時にトヨタおよび日産の九州工場・マツダの本社工場、さらにはダイハツ・池田工場およびシートメーカーの川島織物を訪問し、工場見学ならびに各社の生産システムの変革の動向について聞き取り調査を行った。この工場見学を通じて各社の生産システムにおいてハード面よりもソフト面・ヒューマンウェア面において相当程度大きな相違があるという印象をもった。このことは日本モデルないしドイツ・モデルという国別比較以上に各メーカー別の比較の重要性を示唆しており、今後、そのようなメーカー別の緻密な比較研究に焦点を合わせる必要性も明らかとなった。
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