21世紀の交通のあり方が今大きく問われている。20世紀は「自動車と航空機の時代」といわれるが、自動車社会の行き詰まりが20世紀末に大きく問われ出したのである。自動車交通の3悪(交通事故、自動車交通公害、道路渋滞)は解決するどころか激化し、その他の諸矛盾も深まってきている。 都市がマイカーと共存することはむずかしく、どの都市も増大する自動車需要に必死で追随していったが、しかし自動車交通の3悪を止めることができなかった。 そうしたことから世界の都市交通政策は大転換をし、自動車交通量を抑制して交通全体を合理的にマネジメントする方向に変わった。これが現在の世界の都市交通政策の流れとなっている「交通需要マネジメント」 (Transportation Demand Management : TDM)政策といわれるものである。TDMとは自動車の走行という交通需要そのものにメスを入れ、自動車の効率的な利用促進や公共交通への転換など交通行動の変換により、道路渋滞や環境負荷の軽減を図る体系といえる。 本研究では、自動車先進国アメリカをはじめヨーロッパの諸都市、アジア諸都市で採用されているTDM実施状況を各種文献調査や現地調査で明らかにした。 日本ではいまなお交通需要追随の道路建設・拡張政策が色濃いとはいえ、TDM政策の採用が試行錯誤で進められてきている。各地での交通社会実験を紹介し、日本のTDMの導入方向を評価した。そこでの取り組みの経緯、問題点や課題等を明らかにし、海外調査との比較作業をおこなった。
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