研究概要 |
本年度は,ゴーイシグ・コンサーンの状態が危ぶまれる企業が公表する財務諸表に対して,会計監査人がどのような判断規準をもって,無限定適正,限定付適正,不適正の3種類の監査意見,あるいは意見の差し控えを表明しているのかの観点,および監査人が独自に当該企業のゴーイング・コンサーンとしての存続の可能性に関する情報提供を行っているのかの観点,以上二つの観点に関する実態を明らかにする目的をもって研究を実施した。 当初の研究計画にしたがい,アメリカの実例500件の年次報告書(アニュアル・レポート)のうち,「going concern」および「substantial doubt」の語句が記載されており,ゴーイング・コンサーンに重大な疑義があると考えられる,企業150社について,財務諸表注記におけるゴーイング・コンサーン問題に関する経営者による開示内容の水準,監査人による当該開示内容に対する監査意見の表明形態,および監査人による当該問題に関する監査報告書での説明的な記述を調査,分類,整理し,データ・ベースを作成した。 また,当該150社の企業に関して,過去5年間の財務データを分析することにより,企業活動の安全性と収益性に関する財務分析を行い,データとして蓄積した。これと併せて企業活動の存続の疑義を緩和する経営者の方策に対する監査人の評価における根拠を列挙し,共通の判断指標を分析した。 これら2種類いデータの相関関係を分析し,どのような財務指標が認められるときに,監査人はどの意見を選択し,あるいは情報提供を行うのかについて,監査人によるゴーイング・コンサーン問題に対する判断規準を導出すべく,次年度に向けて作業を進めている段階である。
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