1. 分析を進めるにあたり、まず現状を認識するため、主として米国の先行研究をレビューし、要約した(裏面の論文)。企業の経営者は年金の資産と債務の差額に留意しており、本来の企業業績と関係づけて、企業全体での支払税額が最小になるように、繰入額を調整したり、復帰(reversion)させたりしていることが発見されている。年金資産の時価に着目した場合、80年代前半の米国では年金債務より資産が超過している基金も存在しており、復帰のタイミングが企業の税額に影響を大きな及ぼすことになる。経営者は年金を従業員の動機づけの手段としてのみでなく、財務政策の一つとして認識している証拠が提示されている。こうした証拠は、わが国では現在、年金基金の積み立て不足のみが注目を集めているが、年金に関しては長期的な視野で捕らえることが重要であることを示唆している。 2. 研究の目的は、企業年金の積み立て不足を企業評価に組み入れた場合、企業の業績予測を改善できるかどうかという点にある。年金債務は将来、企業から出て行く資金を表しており、積み立て不足を企業外部から認識できた場合に、予測値は改善されるはずである。現時点では、実施計画どおり、実証研究に必要なデータの収集を行っている段階である。次年度では、わが国のデータを使用して実際に分析を行う予定である。
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