研究概要 |
道路,河川等のインフラ資産は、公共事業で整備される主たる資産であり、21世紀の初めに本格的な更新期を迎え、適切な維持管理と効率的整備が求められている。しかしながら、工学的見地からの物理的更新量の推計や維持管理の最適化手法の研究は進められているものの、その財務的見地からインフラ資産のマネジメントをどうするかについての調査研究は大幅に遅れている。そこで、諸外国、とりわけ会計と予算管理の改革により冒頭の2つの目的を達成しようとしているニュージーランドの実態を理論的・実証的に分析し、我が国の自治体で盛んになっている貸借対照表の活用方策に理論的に政策提言を行うべく検討を行った。そこから得られた含意は次の通りである。 (1)効率的整備の効果的手法として期待されるPFIの推進には、PFIにかかる資産が公的部門に帰属するのか運営主体となる民間企業に帰属するのかの判定基準及びVFM(支出に見合う価値)を実現しているかを検証するため再調達価額による現在価値評価が求められること。 (2)適切な維持管理は、ライフサイクルコスティングの見地から財政事情に左右されない執行が必要であるが、これには会計的に減価償却と金利(キャピタル・チャージ)を認識するだけでは不十分であり、予算において財源として発生主義による資本費相当額が毎年度配賦され、それ以上の資金は原則として更新期においても交付しない制度が有効であること。 (3)貸借対照表へのインフラ資産の計上は、その売却可能性の有無により判断されるべきものでなく、実物資本維持の観点から、フローの損益計算上の正味余剰と正味資産の増減を結び付け、正味資産の保持をアカウンタビリティ確保の基準として採用すべきこと。
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