我が国における道路、上下水道のようなインフラ資産の管理については、2つの課題がある。一つは、その効率的な整備であり、もう一つは適正な維持更新である。後者の維持管理については、今後急激な更新需要が見込まれるもののその財源措置や適正な維持管理体制はほとんど手がつけられていない状況にある。巨額の公債残高をかかえ、低経済成長下で必要な更新財源を確保していくために、従来のような建設公債で資金を賄うことも困難になってきている。このため、必要な更新資金がいくらであるか、政府の財政や世代間負担の公正にいかなる影響を与えるかに関し、適切な財務情報を提供するとともに、会計と予算をどのように関連づけるかにつき欧米の理論と実務を分析して検討を行った。その結果得られた研究成果は以下の通りである。 1.インフラ資産はその処分可能の有無にかかわらず、貸借対照表の資産に再調達価額計上して、減価償却を行うべきである。その国民経済へのサービスポテンシャルを継続的に維持していくことが必要であり、このためには取得価額の期間配分によるコスト回収でなく、サービスコストに見合う財源負担(予算措置)を求める必要があるからである。 2.インフラ資産の投資・維持管理水準を決定するには、財政に与える影響を世代間・財政年度間でなるたけ不変にすることが望ましく、このためには正味資産の額を一定に保つことが重要であり、国民の税負担の変動を小さくする効果もある。
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