本年度の研究実績の概要は、次の4点にまとめられる。 (1)新たに「労働報酬」という概念のもとに、給与、退職一時金、年金、および各種の給付やストック・オプションをまとめ、そこで発生する債務問題として「労働債務」の会計問題を位置づけた。 その場合、労働債務の会計問題は、債務の現在価値の測定問題として捉えることができる。 (2)昨年2月に発表された国際会計基準第19号(改訂)「従業員給付」は、従来の基準を大幅に変更したものであり、その枠組みと構成について綿密な検討を行なった。 (3)わが国の「退職給付に係る会計基準」は、わが国の厚生年金制度の代行部分のあり方や退職一時金制度そのものの変更を迫るものであり、また従来の年金会計だけでなく「債務概念」の再構成をも意味している。本研究では、上記の視点にもとづいて本会計基本の検討を行なった。 (4)退職給付債務を構成する諸要素が、母体企業にとってどのような性格をもつものなのかについて、イギリスのASBの討議資料をもとに分析した。
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