負債と資本の区分の問題を金融商品の会計とかかわらせて研究を進めた。金融商品の会計はアメリカ、イギリス、国際会計基準などで精力的に検討が進められているが、どちらかというと、金融資産の会計が主体であるように思われる。金融負債の会計の研究は、それほど総合的に行なわれていないが、負債と資本の区分という観点から分析が進められているといえよう。特に金融商品のうち新株引受権付社債や転換社債について、負債と資本の区分の問題が生じる。本年度はアメリカのFASBの負債と資本の区分に関するプロジェクトの検討の過程を跡付け、この問題にどう取り組んでいくかについて研究した。 FASBは負債と資本の区分問題のもとになるすべての金融商品の分類を決定するためのアプローチを開発した。そのアプローチとは、特定の構成要素の特性に基づいて負債と資本の金融商品の構成要素を区分する。このアプローチのもとで、金融商品の構成要素は以下のような考慮事項に基づいて区分され分類される。 ・構成要素が金融商品の発行者に一つ以上の実態に対して何か価値のあるものを移転する義務を負わせているかどうか。 ・その義務のもとでどのような種類の実行(すなわち、資産の移転かまたは発行者の持分株式の発行か)が要求されているのか、発行者はその実行の種類を決定する裁量の余地はどの程度あるのか。 ・金融商品に対する契約当事者間の関係が、本質的に所有者持分の関係かまたは債権者と債務者の関係か。 FASBの考え方と国際会計基準の考え方の相違ならびに我が国金融商品会計基準の立場の比較検討がこの問題の研究にとって極めて重要である。
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