研究概要 |
本年度は将来事象を認識領域化する理論的枠組みの研究と,将来事象の計上を規定する個別会計基準についての研究を行った。理論的枠組みについての研究では,現在のアメリカにおいて,将来キャシュ・フロー概念を中心に据えることによって,会計の認識領域を過去の収入・支出にとどめることなく,将来の収入・支出にまで拡大し,取引価格から切り離し,それを公正価値や将来キャシュ・フローによって測定可能にしうる理論的枠組みが構築されていることを明らかにした。そのような将来事象の会計認識領域化は予測・見積という判断領域の拡大をもたらすということも明らかにした。また,そのような理論的枠組みによって論理化されている年金会計基準,偶発事象会計基準,デリバティブ会計基準などの個別会計基準が,具体的に将来事象をどのように認識領域化し測定するのかを研究した。とくに,デリバティブ会計基準においては,これまではオフ・バランスとなっていた未決済のデリバティブ取引を,当期の財務諸表に資産・負債として,公正価値評価によって計上するという内容のものであった。 次年度は日本においても将来事象をどのような方法で,どの程度の認識計上が,どのような理論的枠組みによってなされるかを,両国会計制度のあり方の比較をふまえて検討するとともに,そのような会計理論や会計基準によって認識領域化された将来事象の会計実務上での認識状況の調査を行う。本年度に検討した調査方法にもとづき,アメリカについては財務諸表データベースとForm10-Kによって,日本については有価証券報告書によって,将来事象の計上状況,計上額,および利益への影響について調査する。さらに,将来事象を認識・計上する判断プロセスが,会計実務上どのように行われているのかを公認会計士や企業の経理担当者へのアンケートおよびヒアリングによって調査する。
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