工学に現われる多くの数理について、その工学基礎教育への導入と、代数学的研究の2本を柱として、本研究は計画された。前者は特に線形代数の教材を作成することを目的とし、後者は従来ある研究を詳しく検討することにより、新しい代数的取り扱いを目指したわけであるが、結論からいえば、前者は達成、後者は未達成である。しかしながら、後者の研究も前者の教材作成には多く生かされた。又、章は従来の研究の延長線上において制御に関する新しい結果を得た。(研究発表欄参照)前者の教材作成にあたって具体的には、線形代数の講義及び、特別に設置した数学演習クラスにおいて使用しながら、学生のアンケート等を併用して改善していったわけであるが、その中で制御理論という、より上の学年で習う教材の中で線形代数に関わるものを如何に無理なく基礎教育にとりこんでいくかについてのノウハウを得ることができた。又、これにより学生の多くが、必修だから線形代数を学ぶのではなく、将来必要だから学ぶという方向に変化したこともアンケート結果からたしかめられた。しかしながら、電子機械系の学生にくらべ情報系の学生は制御理論の教材への興味が少ないことも明確になり.1つの教材で教えることの限界も明らかになった。以上のノウハウを基に作成した教材は日本評論社より2000年秋に発行できることになった。
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