研究概要 |
本年度は円分体の岩澤理論における重要な予想である岩澤-Greenberg予想を主に研究した.この予想は総実代数体上では不分岐アーベル拡大が極端に少なくなるというobservationであるが,いまだ実例,理論的根拠共に乏しい.本年度研究において志村曲線を使ったテイラーワイルス系を構成することにより,岩澤-Greenberg予想が円分拡大を動かしたときのヘッケ環の増大列がstationaryになることとほぼ同値であることを示した.これにより,非可換類体論の手法で岩澤理論を論じるという可能性がもたらされることとなった.この結果は1999年12月にMSRI(米国)で行われた国際ワークショップ(Modularity of elliptic curves and beyond)で発表した.また,予想を非可換化できる可能性もあり,その一つの定式化も同時に発表した.定式化の基本となる部分は無限次の円分塔上ある種の普編変形環を定義し、それがどこかのlayer上でのヘッケ環になるかどうかを問うものである.詳細については現在準備中であり,今後もこの方向で研究を進めて行きたい.この他にも以前から研究を進めているモデュラー多様体の岩澤理論についての諸結果をIAS(米国)で発表するなど,研究を進めている.
|