研究概要 |
重さ半整数の場合にニューフォームの理論を構築するという研究目的を達成するための計画の一環として,今年度は次の二つ結果を得た. 一つは,以前に得ていたKohnen空間の場合のニューフォームの理論の精密化である.今までの理論におけるニューフォームには純粋なニューフォーム以外の保型形式が入り込む事があった.これをある条件の下で完全に純粋なニューフォームを取り出す事が出来た.この進展には,いままで誰もあまり扱わなかった4次の指標によるツイスティング作用素を考えたことが効いている.この結果は現在投稿中である. もう一つの結果は,今まで扱えなかった空間のレベルが偶数の場合への拡張である. これが今まで扱えなかったという理由は,研究の主要な道具であるツイスティング作用素がこの場合にうまく使えなかったからである. そこで,今回の研究費で購入したコンピューターにより数値計算を行い,多くの具体例を手に入れた.これらの例を観察すると,今まで考えていたツイスティング作用素以外の作用素もこれらの空間には作用している事が示唆された. ついで,この新しいタイプの作用素が実は今まで考えていた物と異なる指標によるツイスティング作用素であることが分かった. そして,この新しいタイプのツイスティング作用素のトレースも計算する事が可能であることが示されたのである.これは,レベルが偶数のときにもニューフォームの理論を構築出来る可能性を示唆するものであると考えている. この結果はドイツのマンハイム大学での研究集会で発表した.また,現在この結果の報告論文を執筆中である.
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