研究概要 |
重さ半整数のニューフォームの理論の構築という目的で研究を行い,二つの結果を得た. まず,数年前に研究代表者により構築されていたKohnen空間に対するニューフォームの理論の精密化が完成した.今までの理論におけるニューフォームには純粋なニューフォーム以外の保型形式が入り込む事があった、より純粋なニューフォームだけを取り出すことは理論の進展に大変重要である.今回の研究で,ある弱い条件の下で純粋なニューフォームを取り出す事に成功した.この進展には,いままで誰もあまり扱わなかった4次の指標によるツイスティング作用素を考えたことが効いている.この結果は現在レフリー審査を通り,雑誌に掲載が決定している. もう一つの結果は,今まで扱えなかった空間のレベルが偶数の場合への拡張である.この場合には,今まで用いられていたものとは異なるタイプのツイスティング作用素を使用すれば良いことがわかった.これは,レベルが偶数のときにもニューフォームの理論を構築出来る可能性を示唆するものであると考えている.この結果はドイツのマンハイム大学での研究集会で発表した. さらに,重さ半整数の保型形式と重さ整数の保型形式との間のトレース関係式に関する新たな知見を得ることができた.このトレース関係式はニューフォームの理論の構築には大変重要なものであるがトレース関係式がなぜ出てくるかという本質的な理由はいまだに解明されていない.京都産業大学の村瀬氏とこの件について種々意見を交換し共同研究を実施した.その結果,整数ウェイトから半整数ウェイトへのリフトをテータ核を用いた積分により実現する新谷リフトが,これらの現象に関与するようであるとの観察結果が得られた.
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