研究概要 |
代数解析の表現論への応用は、標数0では目覚ましく、今では決定的な役割を果たしているが、正標数では未だ原始的な状態である。発表論文の1では、正標数のequivariant D加群についての基礎付けをした。最近、Rikard Bφgvadが、正標数のD加群についてholonomicityの概念を導入したので、Bφgvadを招請して親しくその理論について学ぼうと計ったのであるが、結局先方の都合がつかず残念なことになった。一方、可換環論で、正標数のD加群の応用による成果が上がりつつあるようで、兼田は、賢島での可換環論symposiumで、正標数のD加群の理論を紹介したが、可換環論の研究者との交流は、初めてだったので面白かった。 単純代数群の正標数の表現論において、標数0の既約加群から得られるstandard加群をWeyl加群という。それらのtensor積がWeyl加群によるfiltrationを持つかという問題は基本的なもので、WangとDonkinによって大方の場合には解決されていたが、統一的な方法で成されていた訳では無いので、残りの場合の解決もなかなか大変であろうと思われていたが、MathieuがFrobenius splittingを使って鮮やかに肯定的な証明を与えた。鮮やかではあるがその証明は難解であったので、発表論文2で、実は、答えがLusztigのbased modulesの理論に含まれており、柏原のcrystal basesを使って初等的に証明できる事を注意した。 現在は、単純代数群のmodular表現論で基本的な結果であるAndersen-Haboush identityの量子化、また、infinitesimal Weyl加群上でJantzen-,Andersen-filtrationsについてGabber-Joseph,Jantzen,Andersen型の予想を考えている。これらの研究に時間を費やし、分担者との共同研究には至らなかったものの、各成果を上げており情報交換は貴重であった。
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