研究概要 |
理論及び表現論において,森田双対性は多方面に用いられ,非常に重要な研究対象である.1969年、Fullerは森田双対性の精密化として右アルチン環上、直既約入射イデアルの特徴付けを二つの射影イデアルの間の関係で幾つか与え,1992年に馬場及び大城はこの結果を半準素環に拡張した.本研究ではFuller及び馬場,大城による射影イデアルに関する幾つかの結果を森田,太刀川によって導入された加群の「対」の性質と融合させることにより一般の加群に対する理論に発展させた.これにより零化条件をもつ「対」の加群が有限Goldie次元をもつ条件や,有限余生成入射加群の特徴付けを与えた.これらは射影イデアルから一般の加群への拡張にとどまらず,性質の本質を明らかにし,更なる展開をも期待されると考えられる. 一方,多元環の表現論において強力な研究手段の一つであるAuslander-Reitenの理論を群環の表現論に応用するために、Auslander-Reiten有向グラフ(以下ARグラフ)とよばれるグラフについて考察した。ARグラフとは直既約加群の同型類を点に,既約写像を矢とみなして得られるグラフのことであるが、1995年にErdmannは有限群のモジュラー表現の場合に,このグラフの形状を決定した.即ち,正標数の代数閉体上の群多元環のブロックがwild表現型ならば,そのARグラフの既約成分のtree classはA_∞であることを示した.この重要な結果を踏まえて、有限群の整数表現におけるARグラフの形状について研究を進め、群の位数がある素数の巾乗の場合に,ARグラフの既約成分で自明な格子加群を合むもののtree classはA_∞であることを示した.またARグラフは,概分裂列とよばれる完全列と密接な関係がある.この概分裂列について,整数表現における概分裂列とモジュラー表現における概分裂列との間にある関連性を見い出した.
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