研究概要 |
昨年度は,クンマー曲面のモジュライと密接な関わりを持つ,エルミートテータ関数の微分公式を研究した.今年度は,ガウスの整数環に付随するエルミートモジュラー形式を考え,そのフーリエ-ヤコビ展開の係数として現れるエルミートヤコビ形式の研究を行った.これらに関して,斉藤-黒川予想の類似を証明した.主な結果は以下の通りである. J_<k,1>:重さk,指数1のエルミートヤコビ形式のなす空間. M^+_<k-1>(4):合同部分群Г_1(4)に付随するモジュラー形式Σ^∞_<n=0>a_nq^n,a_n=0(n≡1mod4)のなす空間(Kohnenの"+"空間の類似). M_k:フーリエ係数がある関係式を満たす重さk次数2のエルミートモジュラー形式の空間(Maass の Spezialcharの類似). Eichler-Zagierの仕事とテータ関数の理論を用い,これら三つの空間が互いに同型であること初等的に証明した.また線形空間J_<k,1>の基底を,次数2のエルミートモジュラー形式の一次フーリエ-ヤコビ係数を用いて具体的に書き表した.
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