研究概要 |
複素代数的特異点の研究が多くなされているのに比べ、実数は代数的閉体でなく代数的に取り扱いにくいため、実代数的特異点の研究はあまりなされていない。本研究の目的は、その実代数的特異点の研究をを行うことである。ここでいう実代数的特異点とは、実代数的集合を含むナッシュ写像の零点集合の特異点のことである。今年度、この実代数的特異点の研究に関し、次の三つの成果を得た。 (I)ナッシュ集合族が同時特異点解消され、上の滑らかなナッシュ多様体上の半代数的自明性から、元の集合族の半代数的自明性が誘導される時、そのナッシュ集合族はブロー半代数的自明性を許容するという。昨年、ナッシュ集合の次元が2の時、即ち、ナッシュ曲面族に対し、ブロー半代数的自明性に関し有限性定理が成立することを示した。今年度、3次元実代数的曲面族に対し、ブロー半代数的自明性に関し有限性定理が成立することを示した。 (II)一昨年、ナッシュ写像のファイバーが滑らかでない点の集合、即ち、局所的にファイバーがC^∞級ナッシュ多様体でない点集合は余次元2以上の半代数的集合になることを、研究分担者の一人である塩田昌弘氏と示した。この問題に関連して、一般に、局所的にファイバーがC^κ級ナッシュ多様体(κ=1,2,…,∞)でないという性質が安定化されることを示した。 (III)実解析的関数(ナッシュ関数)のブロー解析的(ブローナッシュ)同値に対する不変量として、福井不変量がよく知られている。一昨年度、近畿大学の泉脩蔵氏とシドニー大学のT.C.Kuo氏との共同研究において、実・複素解析的関数に対する福井不変量の計算公式を与え、福井不変量の安定性に対する特徴付けを与えた。今年度、福井不変量は2変数複素解析的関数の位相不変量にもなっていることを示した。
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