研究課題
基盤研究(C)
結び目のエネルギーとは結び目全体のなす空間の上で定義された汎関数で、結び目が自己交叉しようとすると発散するようなものである。この結び目のエネルギーの概念について、フランスのブルゴーニュ大のランジュヴァン氏と議論を重ね、これまでの考察によって得られた結び目のエネルギーEとランジュヴァン氏が共形不変な積分幾何を研究する過程で定義した汎関数との関連を調べた。その結果として、新たに無限小非調和比と呼ぶ概念に着目し、その絶対値と実部の差をトーラス上積分したものが結び目のエネルギーEと一致することが分かった。また一方で、ランジュヴァン氏が積分幾何学を用いて定義した量を無限小非調和比を用いて表す公式も得ることができた。更に、これとは別に、「球や円の幾何学」的な視点から、無限小非調和比や積分幾何学からは出てこないような、結ぴ目の共形不変な量を新たに定義した。また一方で、結ぴ目の代数的な不変量における議論と計算機科学における再帰プログラムの表示的意味論との間に存在する強いアナロジーに注目し、再帰プログラムの持つ巡回構造に代数的な不変量を割り当てる一般的な仕組みについても考察を行った。その結果、ラムダ計算と呼ばれる構文体系について、その構造を弱外延性を持たない形で埋め込むことのできる代数構造を、これまで知られているものと比べ非常に分かり易い形で与えることができた。今後は、圏論等の抽象的な視点から、このようなプログラムの構造に関する不変量の議論と結び目のエネルギーに関する議論との関連が明らかになることを期待している。
すべて その他
すべて 文献書誌 (36件)