研究概要 |
研究実績は以下のとおり. 代表者の石井は山田直記氏(福岡大学理学部)との共同研究において,変分不等式を例とする,劣微分項をもつ非線形2階楕円型偏微分方程式についての解の一意存在等を研究した.従来,変分不等式は制限条件付きの変分問題,劣微分作用素の理論等の関数解析的方法で研究されてきたが、本論文では一般の非線形2階楕円型偏微分方程式に対する粘性解の概念を劣微分の定義と組み合わせることで拡張し、解の一意存在,安定性を証明した.また,劣微分項に対する吉田近似を考え,その収束も証明した.この結果についてはAdv. Math. Sci. Appl.に掲載が予定されており,現在印刷中である. 1992年にBence, Merryman, Osherによって提案された平均曲率流の近似アルゴリズムについてはその収束の証明や拡張などが多くの数学者によって研究されている.その中でもF. Leoni氏がAllen-Cahn方程式の解についての漸近解析の方法を用いた証明を与えたが,彼女は比較関数を構成するために平均曲率流方程式を使っている.石井は小川卓克,後藤陽子(ともに九州大学大学院)両氏との共同研究において極限方程式である平均曲率流方程式を使わないで,より直接的な収束の証明を与えた.この結果について論文執筆中である. 分担者の丸尾はn次元球で定義された非線形退化楕円型偏微分方程式の境界値問題について,係数が球対称という仮定のもとで連続な粘性解が一意で球対称解に限るための必要十分条件を示した.この結果はほぼ最良のものと思われる.
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