正規分布の平均の統計的推測において、大きさ一定の信頼領域の構成、最良母集団の選択問題、および点推定問題に関して以下の結果を得た。 百武は、多変量二標本問題において共分散行列が異なっているが、ともに一様共分散のようなある構造をもつときの平均の差の大きさ一定の信頼領域の構成が従来より少ない標本数で可能であることを示し、共分散行列が未知の場合に対しては二段階法を与えた。また、中尾(九州大学)、神田(広島工大)との研究協力によって多変量正規分布における条件付き平均の大きさ一定の信頼領域の構成を二段階法により近似的に与えた。近似の良さをシミュレーションにより検証し、初期標本数がある程度大きいときは適用できることを示した。期待標本数の漸近的性質や実際のデータを用いた応用例も与えた。さらに、青嶋(筑波大学)、Dudewicz(Syracuse University)との研究協力によって、母分散が異なる2つの一変量正規母集団から大きい平均をもつ母集団の選択問題に対して新しい二段階法を提案した。ここで提案した方法と従来の方法の期待標本数を漸近的に比較し、2つの母分散の違いが大きいほど提案した方法が従来の方法より漸近的に有効であることを示した。 丸山は分散が未知の場合の平均の推定問題において、James-Stein推定量を改良している一般化ベイズ推定量のクラスを提案し、そのクラスの極限が正部分James-Stein推定量であることを示した。また、分散の推定問題についても考察し、新たなミニマクス推定量のクラスを提案し、それが良く知られた2つの推定量であるBrewster-Zidak推定量とStein推定量をつなぐようなクラスであることを示した。これらの提案された推定量は超幾何関数で表現することによって、その性質を証明している。
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