研究概要 |
重調和作用素,-Δ^2,は"コンクリート構造物内部での応力伝搬"や"浅い流体層での波の挙動"を記述する偏微分方程式などの主要項として,しばしば現れる重要な作用素である.我々は重調和作用素の性質を確率論の視点から調べるために,それを生成作用素とする"確率擬過程"を考え,BPPと呼ぶ,BPPの構成方法は,"(i)Funaki-Burdzy-Madrecki等によるiterated Brownian motin"と"(ii)Krylov-Hochberg-Nishioka等による符号付き確率測度"の二つの方法がある.昨年度に引き続き,本年度は,"BPPの確率過程としての性質の研究"と"BPPの確率積分やIto/Girsanovの公式などの定式化とその応用"を目的とし,それぞれの構成法の特徴を生かす結果をえるために国内/国際で共同研究を行った. 西岡,佐藤とA.Madrecki(ポーランド,ヴォロツラフ大学)は,BPPの最小到達時間と境界値問題を共同で調べた.Brownn運動などの通常の拡散過程と大きく異なり,BPPは境界に到達するとき"単極子"と"双極子"の2種類の粒子として振る舞う.吸収,粘着,反射の境界条件を"単極子"と"双極子"それぞれに設定するが,いままで反射境界条件の設定には多くの困難があった.今回の研究により, (1) 境界に到達した粒子をεだけ内部に戻しそこから再出発させ確率擬過程を構成する. (2) 上の確率擬過程のリゾルベントをもとめ,ε→0の極限をもとめる. という操作を行うことにより,"単極子"や"双極子"の反射境界をふくむBPPが構成できた.これらの結果は,ヴォロツラフ大学でのセミナーや名古屋大学での研究集会「確率過程とその周辺」などで発表し,現在研究論文として投稿中である. 一方"BPPの境界値問題"は重調和作用素を持つ発展方程式 (*) ∂_tu(x,t)=∂^4_xu(x,t),x)0,t)0 でx=0に各種の境界条件を設定することに対応している.(*)の解は"コンクリート構造物内での亀裂周辺の応力の解析"と密接に関連している.そこで(*)の解を具体的に求めることが必要になるが,その解は"境界条件を持つBPP"のある平均として得られる.数値解析で解を求める場合後者の方がより簡単におこなえることが多い.最近,佐藤は後者の方法により幾つかの境界条件にたいし,数値解析を実施し,数値解析解をえた.現在その結果の発表を準備している. (*)の解は,ある無限次元空間上の力学系を与える.特別な力学系の極限分布がPoisson分布になる(Poisson法則と呼ぶ)という予想は以前からあったが,青木,鷲見,平田はそれを拡張し,この無限次元力学系についてもPoisson法則に類似したものが成立するための判定条件を与えた.この結果は,都立大での研究集会「力学系とカオス」で発表した.
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