1995年から1997年にかけて、進化生物学における最節約原理の数学的定式化および基本定理が花沢正純、成嶋弘らによって与えられた。これらの結果を基礎にして系統樹の祖先形質最節約復元問題(MPR問題)の数理的研究が進められた。今年度の主な結果は、次の通りである。 1. 先に得られていたACCTRAN復元に関する第1定理(完全最節約性)および第2定理(極値性)を多重形質の場合に自然に拡張できることを示した。 2. 通常の最節約復元順序集合(MPR-poset)のσ(r)-version、すなわちσ(r)-version MPR-posetの極値性、および束論的性質を調べ、次の諸定理が得られた。 定理1. α復元およびβ復元はσ(r)-version MPR-posetの極大元である。 定理2. σ(r)-version MPR-posetが最大元をもつための必要十分条件はすべての内点のMPR-setがσ(r)-versionに関して線形性をもつことである。 定理3. σ(r)-version MPR-posetは下半束をなす。 定理4. σ(r)-version MPR-posetが上半束をなすための必要十分条件はすべての内点のMPR-setがσ(r)-versionに関して線形性をもつことである。 系1.σ(r)-version MPR-posetが束をなすことと最大元をもつこととは同値である。 通常のMPR-posetが最大元をもつという既知の結果と系1より、次の系を得る。 系2.通常のMPR-posetは束をなす。
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