マルコフノイズ素の解に対する特異摂動法を用いた漸近解析とその応用

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10640138
• 研究機関: 神奈川大学
• 研究代表者: 成田 清正 神奈川大学, 工学部, 教授 (10211450)
• 研究分担者: 山田 敬吾 神奈川大学, 工学部, 教授 (90111369)
• キーワード: マルコフ連鎖 / エーレンフェスト過程 / 推移確率 / 確率微分方程式 / 確率積分 / 正規確率過程 / 特異摂動法 / 待ち行列

研究概要

本研究によって得られた知見等の成果は以下の通りである。
1. 離散時点で定義されている古典的なエーレンフェスト型マルコフ連鎖(1907)は気体分子の熱交換モデルを表している。これに対しては、M.Kac(1947)が推移確率の構造を完全に決定し、さらに状態が取り得る値の定常分布の平均からの偏差に関する指数関数的急減少性(ニュートンの冷却法則)を特徴づける尺度をも決定している。本研究においては、いくつかの小助変数に依存しながら一般化されたエーレンフェスト型マルコフ連鎖を考察の対象として、連続時点における推移確率の構造を決定しながら、M.Kacの結果を拡張する定理を得た。この結果は、特異摂動下にある電子(神経)回路のネットワークと生産システムにおけるプラトニックな確率グラフの初到達時間解析および待ち行列網拡散近似に応用可能であることを見出した。
2. H.P.McKean(1967)方程式の中でも、特異摂動下にありながら相互作用を伴う多粒子系の線形確率微分方程式のマルコフ解を対象として、小助変数が無限に小さく、粒子数が無限に大きく、かつ相互作用力が無限に大きくなっていくときの極限挙動における分布の導出と同定の定理を得ることが出来た。この結果は、大きな揺らぎ係数を持つ拡散過程の初到達時間解析と確率制御の最適化問題に応用可能であることを見出した。
3. 上記の結果を経済の平均株価・円相場、人口動態力学の内外人口推移、および画像の雑音除去と復元に対して、計算機模擬実験による検証と共にモデルの当てはめを行うことが出来た。これらの理論と実験は学外からの招待講演者・研究助言者と共同しながら発展的成果につなげることが出来、かつ応用数理学会、京大数理解析研究所短期共同利用研究会、経営工学会等で発表され学術誌に掲載されるに至った。

研究成果

• [文献書誌] 成田清正: "Ehrentest型マルコフ連鎖の解析と特異摂動" 日本応用数理学会平成10年度年会予稿集. 188-189 (1998)
• [文献書誌] 成田清正・佐々木太良: "超分散ファイルシステムにおけるデータ最適配置の一手法" 日本ロジステイクスシステム学会平成10年度全国大会予稿集. 87-90 (1998)
• [文献書誌] 成田清正・榎本勉 他: "線形ブラウン運動の解析と成長・減衰モデルへの応用" 日本経営工学会平成10年度春季大会予稿集. 31-32 (1998)
• [文献書誌] 成田清正・千代幸生 他: "画像における熱雑音処理のためのフィルタ処理" 日本経営工学会平成10年度春季大会予稿集. 233-234 (1998)
• [文献書誌] 成田清正・榎本 勉 他: "非線形Population Dynamicsのブラウン運動による解析" 日本経営工学会平成10年度秋季研究大会予稿集. 121-122 (1998)
• [文献書誌] 成田清正・千代幸生 他: "Random Telegrapher Noiseの解析とその応用" 日本経営工学会平成10年度秋季研究大会予稿集. 209-210 (1998)
• [文献書誌] Kiyomasa Narita: "Singular Perturbation for Linear Stochastic Differential Equations in N-Particle System." 京都大学数理解析研究所講究録(RIMS Kyoto Univ.). (印刷中). 18 (1999)
• [文献書誌] Keigo Yamada: "Two Limit Theorems for Queueing Systems around the Convergence of Stochastic Integrals." Stochastic Processes and Their Appl.(印刷中). 6 (1999)
• [文献書誌] 成田清正・高野 優 他: "エクササイズ 複素関数" 共立出版(印刷中), 200 (1999)