本研究によって得られた成果は以下の通りである。 1.Ehrenfestの壷モデルを一般化した離散型、連続型それぞれのマルコフ連鎖に対して、推移確率と定常分布の構造を決定し、オペレーションズ・リサーチにおける信頼性問題と待ち行列問題への新しい応用を展開した。 2.特異摂動下にある多粒子相互作用系のMcKean型線形確率微分方程式の急速、遅速それぞれのマルコフ解に対して、極限軌道の導出と同定を行い、かつ相互作用の影響力を明らかにした。 3.Lorenzモデルの3次元非線形確率微分方程式のマルコフ解に対して、特殊な時空変換を行うことによって、ランダムノイズの復元力を持つDuffing型確率振動子の導出と同定を行った。 4.上記の理論を、計算機ネットワークと情報処理によって検証し、かつ画像の雑音除去、人口推移、株価・円相場推移、情報セキュリティ、ランダムフラクタル、等におけるモデルの当てはめと予測への応用を展開した。 5.これらの結果は、応用数理学会、京大数理解析研究所短期共同利用研究会、経営工学会等で発表され、学術誌に掲載されるに至った。 6.本研究の結果に基づいて、現在は、自己相似な確率過程の影響を受ける確率微分方程式の離散近似とマルチメディアフラクタル画像の情報圧縮に対する理論と応用の展開を進めており、今後は一層の成果が期待できる。
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