本年度は以下の2点において研究の成果が得られた。 (1)高次の自己触媒反応について、反応物が拡散しない場合に、反応の次数と進行波解の最小速度の関係を明らかにした評価を解析的に与えた。この評価式は、これまでにMetcalf et al.やTakase and Sleemanにより得られている評価より良い結果を与えている。さらに、(m+1)次の自己触媒反応に自己触媒がn次の減衰項を持つ場合についても、一定の結果が得られた。まず、n=mの時、ある値が存在して、その値以上の任意の速度の進行波解が存在することを証明することが出来た。しかし、この場合、パラメータに関する比較定理が成り立たないため最小速度の存在を示すことは今後の課題である。n>mの時には、Hosono and Ilyasによるシューティング法による解析を現在追及中である。n<mの時には、減衰項の係数を分岐パラメータとしてサドルーノード分岐が起こることを相空間におけるヘテロクリニック軌道の数値的追跡により明らかにした。我々の結果はBillinghamとNeedhamの予想が成り立たないことを示唆している。また、発展方程式の数値計算に関しては、M.J.Metcalf et al.により得られた一次元進行波の不安定化を追試するとともに、平面進行波の二次元的不安定化が起こることを示した。 (2)3種非対称競争系にたいする侵入と伝播の様相を発展方程式の数値計算を通じて、空間一次元および二次元におけるシミュレーションを行なった。その結果、Petrovsii et al.で示された空間的時間的なカオス的挙動が確認できた。また、球面上でのシミュレーションでは、スパイラル波の発生からカオス的挙動への時間的発展が示された。これらの解析は今後の課題である。
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