(1)Lotka-Volterra 2種競争系において、外来種の侵入による在来種の駆逐を記述する解である進行波解について、侵入速度の評価を中心に研究を行った。 (i)種間競争係数に依存してpushed frontsとpulled frontsと呼ばれる2つの異なった性質の進行波が現れることを示し、進行波解の速度のパラメータ依存性を数値的に解明した。 (ii)Lotka-Volterra 2種餌食・捕食者系における開放空間への同時侵入が可能となるための条件を数値シミュレーションにより検討し、解析的研究の基礎を作った。 (iii)3種非対称競争系と2種餌食・捕食者系が共に空間的時間的なカオス的挙動を示すことを数値的に確認し、それらのモデルの持つ非線形構造の数学的理解の端緒が得られた。 (2)2成分自己触媒化学反応モデル(餌食・捕食者系モデルと見ることもできる)に対してpushed frontsとpulled frontsを考察した。 (i)2次と3次の自己触媒反応が混在するとき、反応物が拡散しない場合について、反応の混在比をパラメータとして進行波解の速度の評価を得ることができた。 (ii)pulled frontsにおける速度決定のメカニズムを調べるため、高次の自己触媒反応について、反応物と自己触媒の拡散係数が一致する場合と反応物が拡散しない場合を中心として考察した。いずれの場合にも、反応の次数と進行波解の最小速度の関係を明らかにした評価を解析的に与え、自己触媒反応の次数が上がると、進行波の速度が遅くなることを示した。 (iii)減衰項を持つ自己触媒反応において、反応物が拡散しない場合にも同様の結果が成り立つことを、減衰項の次数が自己触媒反応の次数より1次低いことを仮定して証明した。
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