すでに、走行性を持つ菌類の個体数密度の時・空間変化を記述するモデル方程式として、移流項を含む反応拡散方程式を提唱した。この方程式について、特異極限法を用いた2次元帯状領域での平面進行波解の存在と安定性に関する論文が、雑誌に掲載予定である。その中で、移流項の関数形と走化性の強さに依存して、平面進行波解が不安定化することを述べた。また、それについての数値計算結果から、不安定化により分岐した解もまた不安定となり、新たな2次元進行波パターンが2種類得られた。この現象は活性一抑制系に於いては見られないものである。1つは、棒状の(菌細胞の)集合領域が走化性の強さに依存して、伸縮するものである。このパターン(進行波解)の存在と安定性を理論的に解決するため、初めにこの方程式が充分小さい拡散と移流係数を持つことから、特異極限法により得られる界面方程式を考察する。この方程式について、最大値原理を用いることにより、ある棒状の初期値に対しては必ず集合領域が伸長することを示した。しかし、収縮する場合については、未解決である。また、もう一つは3つ又構造を持つ進行パターンである。これについては、MikhailovとZaykovが反応拡散系に於ける一対の相対する界面の不安定化を示すために導入した方法を、形式的な界面の近傍での解の漸近展開に応用することで、3つ又構造の近傍を除いた界面の形状を記述する方程式とその速度を求めた。その上、走化性の強さと領域サイズの依存性を明らかにした。しかし、3つ又の交さ角が本質的にそれらに依存しているため、近傍での構造を解明することが必要となり、これは次の問題である。
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