1.走化性を持つ胞性粘菌の個体群密度の時間・空間変化を記述したモデル方程式、及び金属触媒に申る化学反応をモデル化した方程式を移流項を含む反応拡散方程式という枠組みの中で扱う。その発展方程式の局所解の存在は一般論から示した。また、解の一様有界性は各方程式に含まれる移流項の形の違いにより、異なるアプリオリ評価及び比較定理を用いる必要があるが、これにより大域解の存在を証明することが出来た。次に、方程式の構造を規定するひとつの概念である、Temamらにより導入された指数アトラクターについて、存在とそのフラクタル次元が有限であることをSqueezing Propertyの成立により示した。 2.フラクタル次元を具体的に求めることは、空間1次元の場合を除いて難しい問題である。それを示す第一段階としてすべての定常解等の存在を示す必要があるが、走化性モデル方程式については、特別な対称性を持つ(軸対称なもの、平面波、進行フロント波)解の存在が部分的に示されている。それ以外に数値計算により複雑な構造をもつ進行波解の存在が示唆されている。例えば、3つの密度が大きい帯状領域が1つに集まるような進行波解については、方程式が含むあるパラメーター(拡散係数)が十分小さいと仮定することにより得られる縮約系を用いて、その存在を示す研究をしている。 3.縮約系は元の方程式が持つ性質の本質的な部分を残した形で作られているため、例えば定常解、進行波解の存在及び安定性についての議論はこの系を解析すれば十分であり、すでに走化性モデル方程式については応用している。従って、金属触媒のモデル方程式についても縮約系を求めることは重要な問題であり、現在Mikhailovらと共に研究を進めている。
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