複素ユークリド空間C^nの単位球B_nおよび単位多重円板D^n上のハーディ族、バーグマン族について、古典的なボイルリング定理タイプの不変部分空間を考察した。ボイルリング自身は、1949年、n=1の場合、すなわち複素平面内の単位円板上のハーディ族およびルベーグL^p空間を利用して、主要問題としていたヒルベルト空間のシフト作用素の不変部分空間のすべてを、見事に決定した。バーグマン族に関し、また多変数に関しては、まだ未解決の難しい問題である。この問題に対し、数年前から、新潟大学理学部教授泉池敬司氏と共同研究を行い、1994年、雑誌Acta Sci.Math.に一つの成果を発表した。内容は単位多重円板D^n上のハーディ族の外部関数の、不変部分空間を用いての特徴付けであった。また、シムプルな不変部分空間の生成元と外部関数の相違についても論じた。(n=1の場合には、この相違は生じない。)今回の研究ではその論文で導入した新しい概念、一般化された不変部分空間について、Mandrekar、Nakazi、Takahasi、等により考察され、定式化された、通常の不変部分に関する最近の結果を中心にして、かなり広範囲に論考した。彼等の結果に基づき大きく3つのの問題を設定し、ほぼ満足すべき結果を得た。3番目の問題、同次型の一般化された不変部分空間の決定については、余りにも複雑なものが出てくることなり、完全な解決には至らなかった。今後の課題の一つとして残った。結果は雑誌Can. J. Math. Vol.50に発表した。得られた対象は単位多重円板上のハーディ族についてであった。
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