当初の研究計画に沿って研究を進め、次のような結果を得た。 (1)関数の組のWronskianが0をとらぬ為の十分条件をいくつか提出し、それを用いて、LarricellaのF_DおよびAppelのF_4についてのRiemannの問題を、Wronskianが恒等的には0にはならぬとの仮定無しに完全に局所的な条件のみによって解くことに成功した。前者は筆者、後者はKatoによって、もっと強い条件の下で解かれていたが、その条件は特異点での関数の次数に関するもので、本質的にWronskianが恒等的には0にはならぬことを保証するものであった。 (2)当初はブレイド群の超幾何表現がfaithfulであることの証明も目標の一つだったが、そうでないことが証明されてしまった。しかし純ブレイド群の超幾何表現がfaithfulであることについては、そうであるとの証明の骨格を作り上げた。方法は次のようなものである。純ブレイド群の超幾何表現は、本質的にはLauricellaの超幾何関数F_Dのモノドロミー表現であり、F_Dは媒介変数が有理数のときはυ^P=Π^^<n+1>__<i=0>(u-a_i)^<Pi>の形の代数曲線の周期となるので、faithfulnessの問題は結局「代数曲線上の0-homologuousな閉曲線がある種の条件を見たしていればhomotopically trivialか」という問題に帰着する。得られたのはこの問題を解く方針である。今のところ証明が完成したとは言い難いが、後は細部の詰めを残すのみである。 これにより、Conjugacyの問題を行列の計算に帰着させる可能性もでてきた。また、超幾何関数の定義域が単連結と決まるので、その研究への貢献も期待できる。
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