研究概要 |
平成12年度の研究計画は、以下の通りであった。(1)平成10年度, 11年度の研究で数学的に定義した配位空間上及び位相空間上の経路積分を用いて,source Jを持つ量子力学及び自由場の母関数の経路積分に数学的定義を与える(一ノ瀬)。(2)配位空間上の経路積分の結果をより一般化する研究を、Fourier積分作用素理論又はこれを新たに拡張する研究を行う(熊ノ郷)。 一ノ瀬は(1)について,量子力学の母関数の経路積分の数学的定義を与え,更に量子力学における相関関数(correlation functions)の経路積分表示の数学的定義を与えることに成功した。従来物理学では位置作用素についての相関関数のみが知られていたが,11年度の研究で得た位相空間上の経路積分を用いることにより,運動量作用素を含む一般的な相関関数の経路積分表示を与えることが出来た。更に,この結果から量子力学で最も基本的な正準交換関係の経路積分表示も与えることが出来た。この研究は数理研講究録,論文(現在投稿中)で発表される。又これに関する研究を,Ecole Polytechnique(2000年4月,パリ)でのセミナー,Imperial Colledge London(7月,ロンドン)での国際数理物理学研究集会,作用素論シンポジウム(9月,鹿児島),場の数学理論研究会(10月,金沢),数理研研究集会(12月,京都),偏微分方程式キャンプ(2001年,松山)で口頭発表した。尚,相関関数についての研究が思いがけず進むことで,残念ながら自由場についての研究を進める時間が無かった。 熊ノ郷は(2)について,経路積分の核(kernel)の収束の証明をフーリエ変換を用いる方法で簡単化することに成功した。この研究は数理研講究録1176で発表され,又これに関連する研究を筑波大学(2000年,4月)のセミナーで報告した。
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