研究概要 |
本研究の目的は,フラクタルの特性量である特異点スペクトルを数学的に厳密に解明し,他分野への応用に有効な理論を整備することである.多項測度ど無限差分方程式系については,Okada,Sekiguchi and Shiota,A generalization of Hata-Yamaguti's results on Takagi function II:Multinomial case,Japan J.Indust.Appl.Math.,13(1996),435-463,で,多項測度と特異点スペクトルの関連については,Multifractal spectrum of multinomial measures,Proc,Japan Acad,73,Ser.A(1997),123-125,で数学的な理論は構築されてあり,これらの結果が本研究の出発点になった.研究分担者は,各自の研究を進行させつつ,本研究についても積極的な貢献をした.今回の研究では次のことを明らかにできた. 1.p-進数に拡張されたディジタル和問題を,多項測度を用いてることにより解決した. 2.1.に結果の応用として,ワードの出現回数を多項測度で表現できることを示し,その際に多項測度を含むより一般的な測度を見つけた.この測度はグレー符号に関連するものであり,無限差分方程式系による表現もあり,極めて興味深いものである. 3.上の手法とは全く別の方法であるが,ある種のグレー符号は自己相似的な特徴つけができることを示した. 今回の研究は,フラクタル測度の特異点スペクトルを厳密に解明するには至らなかった.しかしながら,グレー符号に関連した測度については,多項測度と同様の扱いができるように思える.今後この種の側度について,当初の目的に近いことが達成できるか検討する必要がある.また,符号理論等のコンピュータ科学的側面からの研究も重要な課題である.
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