本研究の目的は、作用素論における古田不等式の研究である。古田不等式はそのユニークな形と証明方法で注目を浴びてから、様々な方向に応用、発展されてきている。ここでは、まず、古田不等式が、ヒルベルト空間上の有界線形作用素の場合だけでなく、Banach^* ‐algebraの場合も、同様に成立することを証明した。証明には、新しい補題を開発する必要があったが、面白い証明が得られた。この方面の結果は、応用が多いと思われるので、更に、継続して調べる価値がある。 次に古田不等式を拡張したgrand古田不等式のbest possibilityの証明を行った。証明方法は、古田不等式の場合に用いた方法を発展させたものだが、かなり複雑である。 次にp-hyponorma1 operatorの拡張としてlog-hyponormal operatorという新しい作用素のクラスを見つけ、Aluthge変換を用いて、log-hyponormal operatorの面白い性質をいくつか調べた。ここではlog-hyponormal operatorのAluthge変換が、ちょうどP-hyponormal operatorのp=0に対応する性質を持つことを示した。また、1og-hyponorma1 operatorに関するPutnam不等式も得られることができ、それは、やはりp-hyponormal operatorのPutnam不等式のp=0に対応していることがわかった。Berger-Shawの結果に対応する結果は、まだ得られていないが、これは今後の課題である。 巾が負の古田不等式のbest possibilityはいぜんとして未解決である。ただ、否定的に解決できるであろうという有力な証拠が、古田らによって見つけられたので、解決は時間の問題であると思われる。今後も解決に向けて取り組みたい。
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