研究概要 |
I.次の弱い消散項を持つ半線形波動方程式(オイラー-ポアソン-ダルブ-型方程式)の境界値問題を考える. u_<tt>-△u+2β(t+T)^<-1>u_t=au^m,m=2,3,...,β,T>0,a∈R, in[0,∞)×Ω u=0 on[0,∞)×∂Ω Ω⊂R^n,境界∂Ω:滑らかだとする.このときu(t,x)=t^<-β>f(t,x)+v(t,x),f(t,x):almost periodic function,E[v]=o(t^<-β>)なる滑らかな解を持つことを示した.この解の表示により,uはちょうどt^<-β>で減衰することがわかる.方法は前年度用いたものの応用である.粗く言うならば,uの時間無限遠での挙動を支配すると予想される関数t^<-β>fを巧く決めてやり,uから予め引いてやりvについての問題に帰着させる.さらにその境界値問題を無限遠から解いてやることにより,t^<-β>fよりも速く減衰すようなvを少なくとも1つ求めてやることによってその目的が達成された.前年度との違いは解が多項式オーダーでの減衰率をもつことであり,ガレルキン法を用いることでより冪を精密に測りながら解の無限遠よりのエネルギー不等式を求める必要があった.またこの解uは次の混合問題の解とみなされる.一般に混合問題の解wがt^<-β>の速さ以上で減衰することが知られているが(山口勝,上坂洋司氏),uの性質からwの速さの上限がちょうどt^<-β>であることを示していることになる. w_<tt>Δw+2β(t+T)^<-1>w_t=aw^m in[0,∞)×Ω w=0 on[0,∞)×∂Ω w=φ(x),w_t=φ(x) at t=0 次に,解の安定性よりuの近傍のwはuと同じ様な挙動をしていなければならないことより,速さの下限もやはりt^<-β>であることがわかった.すなわち,wの減衰評価とLower boundのOptimalityが示された, II.Iで示したように我々の方法は解の減衰評価のOptimalityを示すのにも有効である.実際,次のNonlinear dissipationを持つ半線形波動方程式に対する境界値問題を考え,その解の減衰率について調べた. u_<tt>-Δu+(u_t)^3=g(t,X) その結果,g(t,x)が適当な減衰率を持つとき,ちょうどt^<1/2-ε>,ε>0:任意,で減衰する解uを見つけることができ,中尾慎宏氏によって得られている混合問題の解の減衰率t^<1/2>が,ε:任意であることからOptimalであることがわかった.
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