研究概要 |
Gを、中心が有限な半単純リー群とし、G=KANをGの岩沢分解とする。そして、P=MANをGの極小放物群とする。極大コンパクト部分群Kの既約表現γを一つ任意に選び固定する。γに随伴する、G/K上の等質ベクトル束をE_γで表し、E_γ上の不変微分作用素のつくる環をD_γと書く。今γをMに制限して得られるMの表現をγ_Mとし、σをγ_Mに現れるMの既約表現とする。Aのリー環の複素化aの上の一次形式λを任意にとると、組(γ,σ,λ)に対して、環D_γの有限次元表現X_<γ,σ,λ>が構成される。ベクトル束E_γ上の関数(切断)で、各導関数が高々指数的な増大度を持つようなもので、環D_γの作用により、表現X=X_<γ,σ,λ>に従って変換する関数を考え、それらの全体をε^∞(E_γ,X)と表す。次に、γの表現空間Vの元で、σに従って変換するベクトルのなすベクトル空間をV_<(σ)>とし、V_<(σ)>上のMの表現と、λから作られるPの表現に随伴するG/P上のベクトル束をF_<(σ),λ>とする。F_<(σ),λ>の無限回微分可能な関数(切断)の全体をC^∞(F_<(σ),λ>)とすると、ポアソン変換(積分)と呼ばれる, C^∞(F_<(σ),λ>)からε^∞(E_γ,X)への写像P_<γ,σ,λ>が得られる。 ここで仮定「γ_Mに現れるすべてのMの表現σに対して、対応するX_<γ,σ,λ>がD_γの表現として既約で互いに同値でない」を置く。このとき、ほとんどすべてのλに対して、写像P_<γ,σ,λ>は全単射であることがわかった。 この結論は、全ての固有関数を考えていないという点で不十分であるが、函数空間を、Gの展開環の中心を使わず、K,M,Aにかかわる量γ,σ,λで記述している点に意味があると思われる。
|